住宅ローンのローン特約排除条項の解釈について

2023/09/22 ブログ

住宅ローン特約とは、住宅購入時、金融機関から融資を受ける予定の場合、融資が実行出来ない事が確定したときは、お客様または売主は契約を解除することができるという特約です。融資を受けて住宅を購入する場合は、必ず付ける特約になります。ただし、申込内容の変更などお客様の事由により融資が実行できなくなった場合は、この特約は適用できません。この「お客様の事由により融資が実行できなくなった場合」とは何を指しているのかについて、売主と買主で解釈が異なり、争いを生じる事があります。

■お客様の事由により融資が実行できない場合とは?

「お客様の事由」とは、ローン実行できなくなった理由が買主本人の事情によるものであることがこれに該当することは明白ですが、問題となり得るには、買主本人ではなく、予定されていた連帯保証人が連帯保証を断った事により、ローンが実行されなくなった場合は、買主は結果的に買主以外の者の事情によりローンが実行されなかったとして、ローン特約に基づき売買契約を解除できるかという事です。この問題は、「お客様の事由」とは買主本人が直接の原因でなくとも、買主が依頼した連帯保証人が保証を断った場合も、買主の責めに帰すべき事由に該当するとみるべきか?という問題です。

■ローン特約排除条項に関する裁判例

お客様の事由により融資が実行できなくなった場合には、ローン特約は適用できないとの「ローン特約排除条項」記載の売買契約を締結し、夫を連帯保証人とする条件の住宅ローンを申し込み、融資承認が得られた後、夫が連帯保証人となる事を断った為、融資が実行されなかった事を理由に買主がローン特約に基づき売買契約の解除を求めた事案があります。買主は、ローン特約排除条項の「申込内容の変更」は、買主自身の事情を買主が自ら変更した場合に限定すべきであり、夫が連帯保証人になる事を拒否したことは買主自身の事情に当たらないとして、買主の「責めに帰すべき事由」には該当しないので、売買契約を解約できると主張しました。判決は、買主は、その責任において夫に対して連帯保証人になることへの了承を取り付ける義務があるべきであるから、買主の責めに帰すべき事由に該当すると売買契約の解約は出来ないと判断されました。また、この事案では、連帯保証人の事情により融資が制限された場合においてローン特約を主張できないと趣旨が排除条項に記載されており、判決は、夫が連帯保証人に就任できなくなった場合には、買主は、新たに夫と同等以上の信用力のある連帯保証人を付けるなど、少なくとも当初の申し込み時よりも住宅ローンの承認が受けにくくなることがないように行動すべき義務があるというべきであると判断しています。(東京地判例3.8.10)ローン特約排除条項では、その内容を明確にするように努力する必要があるといえます。