最近の住宅ローンの金利動向
2023年4月、新たな日銀総裁となった植田氏は、実質的な「当面の金融政策の継続」を発表しました。住宅ローン金利は短期、長期とも、市場金利に影響を受けるため、特に注目さえる情報となっています。2023年1月以降の住宅ローン金利は長期固定金利の代表とされるフラット35は、2022年に発表された日銀の政策金利の緩和の公表後、6月時点でのフラット35の金利は、1月時点に比べてやや高い水準にあります。一方、大手金融機関(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行)の期間選択型の住宅ローン金利は、期間10年、期間5年でみると、1月に比べるとやや低く、変動金利においても同様に低い金利水準になっています。変動金利についてみると、インターネット型住宅ローンの金利は、金融機関の店頭型の金利に比べても、低く設定されています。特にインターネット型専業の「ネット型バンク」内の競争も相まって、さらに金利が低下している状況がうかがえます。変動金利なら0.3%~0.4%程度の金融機関もすくなくなく、諸費用なども加味した実質的な金利でも0.5%程度ということもあります。
■変動金利型住宅ローンを選択している現実
住宅ローンを検討する際、多くの方が悩むのが、「変動金利にするか、長期固定金利にするか」です。当面の返済額の低さを求めるなら変動金利型ですが、将来の金利の変動が気になるところですよね?特に最近は、一般消費者でも「今後は金利があがるのではないか?」と感じることもある様子なので、なおさらかもしれません。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」(2022年10月)によると、69.9%の方が変動金利型を選択しています。住宅ローンを借りる前は、長期固定金利を選択しようと考えていたものの、実際に借りる段階になると変動金利型を選んでいる方が多いという事が考えられます。この理由を推測してみますと、「低い金利の変動金利型を利用しないと、購入価格との関係で借入希望額を借りられない」「住宅販売業者から変動金利型で借りる方のほうが多いと言われた」「みんなが選んでいるから」などの声もあるようです。
■変動金利型の商品性の理解度には懸念
変動金利を選択する場合、将来の金利変動によって、支払うべき利息が増加する可能性があること、未払い利息の発生の仕組み、5年毎に返済額が見直される方法について理解しておく必要がありますが、必ずしも十分な確認もせず、変動金利型を選択している実態があります。住宅金融支援機構の調査結果によると、変動金利型や固定金利選択型のリスクについて、一定の理解をしていると回答した方は5割程度という結果でした。逆にいえば5割程度の方は、理解が不十分なまま変動金利型などを選択している事になります。
■固定金利型への借り換え条件の予測が難しい場合も
基本的に変動金利型の金利が上昇する時には、すでに長期固定金利のほうも相応に上昇していることが予想されます。この為、変動金利型の金利があがってから長期固定金利型に借り換える場合は、割高と感じる金利になっている可能性が少なくありません。少なくとも、目先の毎月の返済負担を減らしたいといった意向には沿わない可能性があります。住宅ローンの借り換えとは、同じ金融機関で行えることもあるものの、基本的には他の金融機関で新規に住宅ローンを借りる行為です。この為、新たに諸費用が発生するほか、自身や社会の経済情勢の変化や金融機関の審査基準などで、借り換え自体ができないという可能性もあります。この為、「金利が上がってきたら固定金利型にかえればいい」などという安易な考えは、極めて危険です。金利が上がりそうな気配を感じた段階で、借り換える事が理想的です。早期に金利があがりそうと感じているなら、最初から長期固定金利を選んでおくのも無難といえます。今後の金融市場を予測する事は困難です。これから住宅ローンを選択する人の多くの人は、少しでも金利が低く、返済額が割安な変動金利型を選ぶ傾向が強いものの、長期にわたる住宅ローンの完済には不安を抱えている事も事実のようです。物件価格の高騰に伴い、住宅ローンの借入額も増加傾向にあり、将来の返済不安も増しているのではないでしょうか?選択する住宅ローンの詳細を検討し、住居以外のライフプランもシミュレーションして、発生するリスクを十分に把握する事が重要です。